青かった空の色が灰色になって、物の数分でその雲の色が暗くなる。
暗い灰色の雲と灰色を映す窓ガラスと、灰色のビル群に囲まれた灰色まみれの中で
ぽつりぽつりと降りだした雨がざあざあと音を立てて跳ねるようになるまで、大した時間はかからない。
「さいあくだ」
そうして定番通りに傘を持たずに出てきてしまったはそうぼやくしか無い。
雨の主張っぷりが半端無い。
外に出た瞬間ずぶ濡れ確定。
バケツをひっくり返したようななんとかかんとか。
だが雨は一向にやむ気配は無く。
( ・・・走るかなあ)
なんとなしに、大雨の降る外を眺めたままぼんやりとする。
雨の音は嫌いじゃない。
でも外出時にこんな雨だなんて。
嫌いとか好きとかそういう問題じゃないな。
濡れると困るものあったかなあ。と思ったけど今日持っているのは財布と携帯ぐらいだ。
ここから私の住んでる場所までは走って20分ぐらいだろうか。
遠いな。ちくしょう。
でも雨は収まる気なんてまったく無さそうだったから、
よっこらせ、と立ち上がる。
心は決まった。
よし走ろう。
走って帰ってそんでシャワー浴びる。一通りメールのチェックとかして、そんで一眠りしよう。決定。
というわけで深呼吸して
覚悟を決めて
いざ!
「ひっうおっ・・・!」
「おい待てあんた こんな雨ん中走ったら風邪引 ってじゃねえか」
「っあれ、門田さん」
思いっきり腕を引かれて後ろの人にぶつかったと思ったら門田さんだった。
「無謀だろどう考えても」
「走って帰った後にシャワー浴びれば大丈夫かと思いまして・・・」
「・・・の住んでるとこって、ここから近かったか?」
「全力で走って20分ぐらいかな!」
「・・・とめて正解だったな・・・全力がそんなに保てるか」
「火事場の馬鹿力的な!」
「やめろ。そんなもんをここで発揮するな」
「・・・にしても門田さんはどうしてここに」
「仕事でな」
「そうですかおつかれさまです」
「おう」
「・・・」
やばい会話途切れてしまった。
どんなこと話せばいいんだろう。
がそう頭をひねり始めると、門田は「俺だ。」とどこかに電話をかけ始めたようで、は黙って門田の横顔を見つめる。
この前のあのときから。
なんとなく意識してしまっている自分がいるのは事実だ。
そう。ほんとうになんとなく。
スカートが地面につかない程度に座り込んで、膝元に顔を埋める。(ちょっと顔赤いような気がするだなんてことは、断じてない)
「今、渡草たちを呼んだからよ、一緒に乗ってけ。近くまで乗せてく」
「え、いいの」
「当たり前だろ。次からこういうときは俺に電話するんだな。なんかあったら電話しろって言っただろ」
そう言って、門田さんは優しげに微笑む。
あああ、だから、その顔、反則だから。そうおもって、照れ隠しに、せめて、
「そんなこといったらほんとしょっちゅう呼び出しちゃう、よ」
って返せば、かまわねえよ、なんて言うから。
恥ずかしくて、顔なんて上げれない
雨のち晴れる
好きな子ほどちょっといじめてみたい門田さん
2010.11.17