「暇です」
「そォか」
「退屈です」
「へェ」

ごろごろごろごろごろごろ。転がりながら言う私に、生返事しか返さない一方通行。
そろそろ暖かくなってきたので、こたつはもう片付けてしまった。自由に使えるスペースが少しは増えたのはいいのだけれど、今度はこたつで温まりながら眠ったりができない。一方通行は、太陽に背を向けるようにおいたソファで寝転がりながら雑誌をぱらぱらとめくっている。(ちなみに私が買った雑誌である。590円なり。)(そして私は未読なんだよこれおかしくない!)
見たい番組があるわけでもないけれどなんとなくテレビをつけて、チャンネルを一通りぐるぐる回す。コマーシャル。ニュース。コマーシャル。バラエティ。ニュース。通販。ああ面白そうなのないなあとは思うけれど、テレビを消すと、この部屋に流れる音は私がごろごろ転がる音と、一方通行が雑誌をめくる音と、あと、ときどき聞こえる外からの音だけになってしまう。


今日は本当にいいお洗濯日和で、掛け布団はベランダで太陽とご対面中である。日向は彼のソファが占領しているので、私は日陰族である。
つまり、昼寝も、できない。
私はあとどれぐらい暇でいれば良いのだろうか。(そしてこいつの良心はちっとも痛まないのだろうか。)


なんとなく視線を感じて、ちらり、と後ろを見てみるが、彼は雑誌にご執心のようだ。

「どっかぶらぶらしてこよっかなあ・・・」
「理由は?」
「暇つぶしだよ」

あんたが構ってくれない上に雑誌返してくれないからだよ!とでも言ってやりたかったが、さすがにそれは抑えておく。(言うと後が怖そうだから!)
一方通行は少しの間私を見てから、また雑誌へと視線を移してしまう。それを見て私は体を起こして、軽く身だしなみを整えてから、玄関へと足を向ける。一方通行の寝転がるソファの横を通ろうとした瞬間に、







「暇が潰せりゃいいンだな?」






雑誌が落ちる音がした。





「なに ・・・っ!」

腕が、体が、引き込まれたのと同時に唇が奪われる。

狭いソファの上に無理矢理座らされて、私の酸素までもを奪って彼の唇はようやく離れたけれど、いつの間にか背もたれに体を押し付ける形で、加えて言うと逃げようにも逃げられないようにソファの縁は一方通行が掴んでいて、 なんだこれ、いみ、わかんない え、なに、このひと今までほっといたくせに、自分の都合のいいときは。それなのに私は、やっぱり好きで、そう思うとなんとなく悔しくて、わたしは、目をそらす。

「ンだよ」
「・・・自分勝手」
「るせェ」

言葉が返ってきた後もなんとなく彼のほうを向く気にはなれなくて。それで、少しの間気まずい沈黙が流れる。意外な事に最初に動いたのは一方通行のほうで、ああめんどうだとでもいわんばかりに彼はがしがしと頭をかいて、それから私の頬を掴んで正面を向かせて、「悪かった」と、一言。
本当に珍しく、彼が困惑したような顔をしていたので、私はおとなしく許すことにして。

「・・・しょうがないから許してあげるよ」
「それは、ありがてェな」


そう彼の呟く声が聞こえて、彼が私の横に来る   と思ったら腰らへんと膝下辺りをいきなり持ち上げ----つまりはお姫様抱っこだ----られて、青ざめる。

「えっちょ、暇つぶしってまさか」

どさり、と掛け布団のないベッドに落とされる。
でも別に一方通行はそんな気は無いらしくて、ごろりと私の隣に横になる。つまり、寝る気だ。


「昼から盛るか、バァカ」

そう言って早々に目を閉じている。

「・・・布団いれてこなくていいかな」
「あると逆に暑ィ」
「そ、か」
「だからもっと寄りやがれ」

そう言って彼は私の首の下を通して背中へと手を回し、引き寄せる。


視界をあなたで埋め尽くして

( 「ち、近い近いちかいちかいようあああ」 )( 「るせェ黙って寝ろ」 )

雑誌に興味があったというよりは暇して百面相してるのが見たかったんだと思うよ。そういえば変換がなかった。
タイトルはバニラレバ様からお借りいたしました。

2010.4.5