「あくせらさん、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか」
ああああ。まあ最近はよくあることだけど。悲しいけどよくあることだけれど。
「勝手にしろ」
「この人たちはお友達ですか」
私は、私達をぐるりと囲んだ人たちを見てそういった。なんか釘バットとか鉄パイプとか持ってるよ、おお怖い怖い。
いったい警察は何をやっているというのだね。めっちゃ多い人数で集会とかしてたら取り締まるべきじゃないの?と思えてくる。
「そう見えるンなら、テメェは大バカだな」
「確認だよ確認」
まさか拳銃とか持ち出してくるやつはいないよね、と、周りをぐるりと見渡すが、一応そんなやつはいない、ようだ。
あああああめんどくさいめんどくさいせっかく買い物に来てたのに、それだけだったのに、何でこうなるんだろう ね!(チキショウ!)
ちなみに辺りが十分暗い時間の話なので、誰かが通るということはまずないだろう。
(何でそんな時間にかっていうと、彼が「混雑は嫌い」、私は「割引の商品狙いたい」である。)
唯一の救いは買い物帰りではなく、行く途中だったことだろう。卵とか牛乳とかアイスとか色々買う予定だったから、大荷物でさらに面倒なことになっていただろう。でも今日タイムセールとかあったのかなあ。あったら勿体無かったなあ。一応お金は全部一方通行持ちだけど、節約するならそれに越したことはない、と思うのは一人暮らしが長かった名残であると思う。
相手さん方(総勢恐らく20人前後)はやっぱり帰ってくれる気はまったくないようで、残念ながら、売られた喧嘩を買わざるを得ない、ようである。残念無念。まあ負ける気は無いけれど。お互いやる気は満々であり(
後ろの一方通行は心底面倒くさそうである)(つまりお互いというのは私VS周りの相手さん方を指すのであった )、相手さん方は既に得物を構えて臨戦体勢である。今日は病院が儲かる日だね、まったく。
「私、この戦いが終わったら一方通行さんとデートするんだ・・・」
「盛大に死亡フラグ立てンじゃねェよ。ッつーか勝手に決めンじゃねェよ」
「結婚するんだまで言ってないだけいいじゃない」
「何の話をしてンだお前は」
「じゃあタイムサービスの割引商品買うんだ・・・」
「・・・ダサすぎンだろそれ。一緒にいて情けねェ」
「うるさい細腕」
「なんか言ったか貧乳」
「え、差別だよそれ差別だよ!」
きいいっ、と相手さんに背を向けて一通さんに噛み付く(ほんとにがぶりとはしていないよもちろん。表現上だよ。)と、隙ありとでも言わんばかりに一人が飛び掛ってきたので、それをかわして相手の体勢が崩れたのと同時に、背骨の中心辺りに肘鉄をお見舞いする。
一方通行がこちらに気をやっているとみたのか、反対側から三人ほど飛び掛ってくる。しかし勿論、何の動作もせずに一方通行が反射する。
「さんよォ」
「・・・なによ」
何かを思い出したかのように、私の名前を呼んで、私が振り返る。と、そのまま思い切り一方通行の方に引き寄せられたかと思えば、頬に一方通行の唇が、押し付けられている。・・・ってこのひとなにやってんの 反射的に数秒固まる。周りも固まっているのが空気でわかった。
彼はそのまま私の耳元で呟く。
「3分で終わンならデートする時間もありそォだなァ」
冗談だったのに。冗談のつもりで言ったはずだったのに。けれどこれは、純粋に嬉しくて笑みが零れる。
「相手は巨乳のおねーさんがいいんじゃないの?」
「ンなこと誰が言ったンだよ」
・・・この状況に動じねェような、そンで俺についてくるような物好きテメェ以外にいるかッての。
そう呟いたのを聞いて、思わずにやけそうになって。
私は半ばヤケクソ気味に、いい加減待たされてキレそうな、ギャラリーの皆様の応対に向かった。
叫ぶ恋の行方は
そんなとこも含めて大好きだよ!
( 「チッ・・・バッテリー切れた」 「!? ばっかやろおおおおおおう!」 )
敵に囲まれながらいちゃつくってどんなバカップルだよ。 タイトルはバニラレバ様からお借りいたしました。
2010.4.5