しくじった。
しくじった。
しくじった。
雨の音にまじって、ばきり、という鈍い音が聞こえる。
その音はどこからかと尋ねられれば、私は「自分の体から」と答えざるを得ない。
(ただしそれは、)
(その場その時に嘘をつく理由が無ければの話だ)
体中が軋みすぎて音が反響して聞こえるんだけどきこえない
あめがうるさい
久々だな。
死ぬのなんて。
もし私が喫煙者だったら最後の一本とかいって煙草を取り出すのかもしれない。
でもあいにく私は喫煙者じゃないから、このまま、ぐだぐだと、この世界の自分が死ぬのを待つだけ。
白くて黒いものが走ってくるのがぼんやりと見えるけれど、私はもう、それが何なのかを認識することすら、できない
ねむい
目を閉じる。それがひどく、当たり前で、自然なことのような気がして、もう開く気にはなれなかった。
夜の都会というものは、人は多いが薄暗いという点では危険であり、
人が多いということはまた違う意味で危険である。
時に救いとなるかもしれないけれど、それでも。
こんな路地裏に誰かが来る筈もなく。
誰にも知られず死んで行く。
正しくない。
それはにとって、正しくない表現だ。
誰にも気づかれないうちに巻き戻る。
この日この時間この場所この状況で、死んだ事実を知るのは、本人だけ。
だから、は思考する。
こうなった原因と過程について。
明日から。
明日から本気出す。
だって、
どう
せ
ま
た す
ぐに
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「オイ 聞ィてンのか」
「聞いてるよ エンゲル指数のことでしょ」
「誰がいつ、ンな話をし始めたンだよ・・・」
「金のエンゼル銀のエンゼルのおもちゃって小さい子向けだよね」
「知るか」
「まあそのうち戻れるさ 戻らないと話が進まないし」
「だからお前はどうすンだって話だよ」
「べつに」
「・・・」
「どうもしない」
「・・・お前、なンかあったのか」
こっちきてから変だ、といって、一方通行は私の顔を覗き込む。
「どうもしないよ」
そういって私は、目を閉じる。
(ただ、あらためて思い知っただけ。)
(最強だっていっても、彼も死んでいく人間)
久遠の眠りは訪れない
(でも確実に、心だけは死んでいく)