その日の、夜。
「またあんた?」
は、自分以外の人間は誰もいないはずの部屋の中でそう問いかける。
不機嫌に、つまらなさそうに言うその姿。一方通行の前では決して見せないものである。
「ほんとにあんたたちが原因じゃないんでしょうね」
紫色の魔女は静かに、笑顔で頷く。
そうして、口を開く。
『そういえば--------------』
ばだん!と大きな音を立てて扉が開かれる。
フードを被ったを、一方通行が凝視する。「どうした」と話しかければ、「ちょっと出かけてくる」としか、彼女は言わない。
表情は暗い。
「夕飯は」
「冷蔵庫のもの食べて。遅くなる」
「俺も行ッたほうがいいか」
「私一人のほうがいいかな」
「帰りはいつになる」
「明日には戻る」
「そォか」
じゃあ行って来い、好きにしてる。と、一方通行。
は無言で玄関に向かい、一方通行はそんなの背中を目で追う。
-----------なンだ?
----------なにかあったのか?
でも。ここで今自分が追いかけて何ができる。
も、一人のほうがいいと言っていたではないか。
「・・・しゃーねェ」
仕方がないので、寝ることにした。
には敵がいる。
加えて、には、その人間に対して貸しがある。
それは貸しと呼んで良いものかは不明だが、それでもは貸し、と言っている。
とある人間。それは。の、-----------血のつながった、実の父親である。
そして、を実験体として育ててきた人間。
加えて、彼女が明確な"理由"を持って殺そうとしている人間である。
と同じくセカイを渡り、の経過を"見守って"いる、らしい。一方通行には黙っていたが、学園都市の発達に、一枚噛んでいるのではないかとすらは考えている。
パラレルワールドだ。
あの場所は。
その世界で巡るために-------彼女は、魔女たちとの縁を切らずに、ここまで大人しくしているのだ。
利用されるなら、利用する。
自分の力だけでは、永遠にも似た時間を繰り返すなんて、不可能だから。
それがの出した結論。
そして、その敵が、この世界にいるという、話を、聞いた。
「今大丈夫?」
『私は大丈夫ですけどこそ大丈夫ですか』
「ぜんぜん平気」
『了解です、では----』
電話の相手が場所を告げる。
方向転換をして、また走る。
「---- 休暇って言ったくせにね・・・!」
苦々しげに毒を吐いて、明日までに帰れるかわからないな、と、そんなことを思った。
Night in the rain
(きみのしらないものがたり)
つぎあたり別サイドの人間が出てきそうです。戻ったからには絡ませたい。