目を覚ますと、一方通行がいました。
「・・・・・・・・・・!?ひい」
「よォ」
普段はひいじゃねェよひいじゃ、とでも言って頬引っ張ってくるような一方通行が。
ひたすら底意地の悪いような笑顔で。
笑っていた。
コワイ。
マジコワイ。
しかもなんで馬乗りなの。超コワイ。
「・・・・・・・・・お、おはようございます。なんで、いるん、です、か」
「それはこっちのセリフだバカ」
「ちょ、っとま、ってくださいあの降りてください重」
「なンかいったか?」
「すいませんそのままでお話ください」
起き上がることすら出来ないし、しかも寝起きだから自分が今どんな顔してるかすらわからないから出来たら顔でも洗った後コーヒーを淹れて一休みしてから落ち着いて逃げたいものだけど、大体私の行動パターンを読んでいるらしい彼は一瞬たりとも私を押し付けておく力を緩めないというおまけつき。
寝癖、ひどいだろうになあと思って遠い目をしていると、思い切り
「ったくもうお前はなンすか?なんなンですかァ?」
「ぎゃあごめんなさいすいません!!いたいいたいうひゃあ!」
両頬を引っ張られました。
「あ、あくせらさ、やめ」
「ヤだね。まだ足りねェ」
「足りないって何が!とりあえず顔洗わせてください」
「逃げそうだから却下」
「どんだけ私信用無いの・・・」
「あァ、ねェな」
どくり、と。
思考が止まる。
しょうがないことなんだ
説明無しに一方的にあれだけのことをやって、自分勝手をして、そんで。気まずいなんてそんなレベルじゃない。
一方通行の手が、ようやく頬から離れる。
それでその手は、別に押し付ける気は無いっていうぐらいの強さで、私の両手をベッドに縫い付けた。
「ばっかやろ 何考えてたンだよ」
「・・・すいませんでした」
「とりあえず全部吐いてもらうからな。隠し事したら」
「・・・・・したら、どうするの?」
「一生離れンのを許さねェ」
「それ、罰とかじゃないじゃん」
冷たい右手が絡んで。
それで。
「・・・別に嫌われたわけじゃねェんだな」
よかった、と 安堵のため息が、降って来る。
彼に触れたかったけれど、両手を両手で塞がれているから出来ない。しょうがないから、絡んだ手を握り返す。
「誰がそんなこと言ったよ」
「あのやり方で思わねェヤツがいンのかよ」
「いるかもしれないよ」
「いいや思わねェな」
「・・・まあそういうことにしとこっか。じゃあそろそろ降りてくれませんか いい加減苦しいんだけども」
「コーヒーよろしく」
「わかったよ」
一方通行がようやく退いて、体が軽くなる。
上半身を起こす。体を伸ばす。
そういえば部屋の構造いったいどうなってんの。
私は私の部屋の私のベッドに入ったはずだ。
そしてこの部屋も私の部屋の筈だ。
びっくりするほどユートピア。
部屋ごと他の世界に吹っ飛ばされたのは一度や二度じゃないけれど。
大体そういうことらしい。
私は、私の部屋ごとこの"科学"の"学園都市"に戻ってきた。
「」
先に部屋から出た一方通行がこっちを向いて、言う。
「おかえり」
人格者ごっこ
( ただいま )