「ミサカはミサカはちゃんにプレゼントがあるの!」
満面の笑みで、目の前のミサカちゃんが私を見上げている。(ああかわいい上目遣いかわいい誘拐したいぐらい!)(そのあと誰かさんが殺しにきそうだからやらないけど)この笑顔だけで十分プレゼントに値してしまうこの子は本当に恐ろしい子だ。けど果たしてプレゼントとはなんなのだろうか。「プレゼント?」と聞き返してみると、「プレゼントなの!とミサカはミサカは嬉しそうに返してみる!」と、またこぼれそうな笑顔が返ってくる。この子は天使か。
「バレンタインのお返しなの!とミサカはミサカは懇切丁寧に教えてみる!」
あ、なるほど。そんなものもあったっけ。完全に忘れてた。
「でも一緒に作ったじゃない」
「これは作り方を教えてくれたお礼なの!とミサカはミサカは感謝の気持ちを現してみる!」
なんていい子だ・・・!と思い、「そっかそっか、ありがとうね」と返せば、ミサカちゃんは後ろ手に持っていた可愛らしい包みを私に押し付ける。どうしよう。超お持ち帰りしたい。この子ごと。うん。・・・しないけど。(あくまで希望的観測)
包みを開ければ、美味しそうなクッキーが数枚、入っている。
「美味しそうだね、一緒に食べよっか」
「わーい!とミサカはミサカは賛成する!」
そういって一枚渡すと、クッキーを小さな両手で大事そうに持って、大事そうに食べるミサカちゃんの姿に私の心臓は爆発寸前でした。(断じてロリコンではありません。ええ、断じて。)
「ということが今日はあったのだよ一方通行さん」
「・・・・へェ」
「可愛いよねーミサカちゃんほんと私ロリコンに目覚めちゃいそうなぐらい可愛い」
「犯罪だからなソレ」
「だから一通さんも手出しちゃダメだよ、あだ名がアクセロリータになっちゃうよ」「一回お前が死ね」「ひどい!」
今日は(というか最近は)お部屋に襲撃してくる招いてないお客さんもいないため、まったりと夕飯の片付けをしていた。
「わあ!まさか貰えるなんて思ってなかったの!とミサカはミサカは純粋に喜びを表現してみる!」
「あァそうかよ」
顔を上げれば、ミサカちゃんが貰ったクッキーを振り回しながら、嬉しそうに笑っている。年相応にはしゃぐミサカちゃんはとても純粋で、眩しかった。
「ありがとう!・・・でも、あのあの、ちゃんにはあげないの?とミサカはミサカは質問してみる。この前のはミサカとちゃんの合作だった筈なの、とミサカはミサカは確認してみる。それに、確か」
「うるせェ黙ってろ」
「そんな言い方無いでしょー!ねーミサカちゃん!」
「ねー!とミサカはミサカはちゃんに同意してみる!」
一方通行は「勝手にしろ」といって、風呂に向かってく。ミサカちゃんにひと言、私に聞こえないように何かぼそりと言ってから。心なんて痛んでない。何も、ない。
夜になり。夕飯を作り。ミサカちゃんはおねむのようで、先に就寝中。
「そういえば私もミサカちゃんからバレンタインのお返しもらったんだよ、作り方教えてくれたお礼、とかいって」
「・・・・・・・・へェ」
「いいでしょ!」
「あアはいはいよかったですねェ」
「つめたい!」
相変わらず彼はつれないのでまことに残念です。まる。
ああこの時期のホットカーペットは私の味方だよ。そんなことを思いながら寝転がってテレビをぼんやりと眺める。長時間ここにいたらそのうち寝てしまいそうな心地良い温度。コタツとはまた違う暖かさになんとなく気分もよくなる。
「そんでねーミサカちゃんがねー」
「おい」
「?」
「なんで今日はンな話ばっかりしてンだよ」
え。
「自慢?」
「・・・」
少しの沈黙が流れて、肩と背中と後頭部に、衝撃が来た。無理やり、上を向かされた。
驚いて目を見開けば、見えるのは直視するには眩しすぎる部屋の蛍光灯と、色のぬけた銀色の髪。私を押し倒した張本人である一方通行は、無表情で私を見ている。
「すいませんなに押し倒してんですか」と聞けば、黙ってろといわんばかりの深い口付けが降ってくる。え、ちょっと、なに。驚きで目を見開く。だって一方通行さん、こんなこと、したこと、なかったのに、
「んっ・・・!」
酸素が奪われる。さすがに苦しくなり、床に縫い付けられた腕をもがくようにばたつかせれば、まるで、縋るように、私の手首を掴む力が、強くなる。捕まえるのではなく、捉まえている。少し薄れた意識でそれに気づいて、私は抵抗するのを、やめた。
「・・・言いたいことあンじゃねエのか」
少し潤んだ瞳で彼を見上げれば、血色の悪い顔を少しばかり赤くして、相変わらず少し不機嫌そうに私を見下ろしている。
なにを、言えと、言うのだろうか。
言いたいことは数え切れないほどある。
けどこの場で、彼はいったい、どんな答えを求めてるんだろう。(、本当は、わかってる、のかもしれない)
「今日あったことについてのみ、な」
「ロリコン」
「そこじゃねェだろ」
そう言ってまた、意地の悪い顔をする。ああもうずるいずるい。こいつはわかってるんだ。こういうことにおいては私よりも私のことをわかってるんだ。わかってるくせに、わかってるくせに、こいつはいつもそうやって誘導して、逃げ道を狭めていくんだ。
きっ、と睨み付けてやれば、「ンな顔されても怖くねェよ」という言葉が降ってくる。
少しの間その状態が続いて、仕方ないというような顔をしたかと思えば、また一方通行の顔が、近づいてくる。「ちょっ・・・なにっ」首元にかかる彼の髪が、吐息が、くすぐったくて身をよじる。逃がさないとでもいうように、彼の唇が、私の首に、吸い付いた。
「ちょ、待って待って、言うからっ・・・!」
「正解できるまでこのままだからな」
「(この鬼畜!)っ・・・!」
押さえられた手首の力が緩まって、かわりに指と指を絡められる。ようやく決心して、言葉をなんとか、しぼりだした。
「わたしにはお返し、ないの」
涙が出る。自分が、嫉妬してるのが、-----------自分が、心のどこかでミサカちゃんを羨んでいるなんて、 こんな、誰かを好きになる面でもどす黒いなんて、ことばにだしたく、なかった。(それもこれも嫌われるのが怖かった、なんて。なんて、醜い)
一方通行が、ふ、と笑って(吐息がかかって私はまた赤面して、)細長い箱を、寄越した。
(ところでどうして体勢このままなんですか一通さん)
「開けろ」
「・・・この体勢のままなんですか?」
「構わねェだろ、別に」
「(構う!構うよ超構うよ!)」
自由になった手でそれを受け取る。(そして一通さんの手は私の腰に行く不思議)(別に私たち、彼氏と彼女とかいう関係でもなんでもなかった、ですよね・・・?)
箱を開くと、そこには、
「ネクタイ?」
「あァ。金物っつータイプじゃねェからな、お前。それに」
「?」
「・・・・・いい加減、気づけよ」
「え、あの、肉体関係なら私、お断りさせていただき」「そうじゃねェよバカ」「っ・・・」
「好きだ、」
エラー、言葉が見つかりません。
わかったことがひとつある。
彼の体は、ホットカーペットより、心地良い。
( ネクタイを贈る意味を知ってるか )( "あなたに夢中です"だ )
一通さんのキャラが微妙に捏造ですいません
べっべつに季節イベント物をその日以外は書いちゃいけないなんてルールないもんね!ね!
2010.3.29