午前11時
「はいはいはいはいもうそろそろおひるですよおはようございます・・・うわっ、またひっどいやられ様ですね。
まったく誰が新しい買うことになるって思ってるんだっての。この程度の鍵じゃやっぱ壊されちゃうんですよ。
もうちょっとセキュリティ良いとこ住んだほうが・・・って、聞いてますアクセラレータさん?」
「・・・るせェ。・・・どうしてここにいる?」
「え、そっちが言ったじゃないですか。"お前俺に負けたんだから一週間俺のために働け"って。」
「・・・・・・・・で?」
「ごはん作りにきました。台所勝手に使いますよ。何食べたいですか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「わかりましたいえすオムライス」
「なにもいってねエよ・・・あーねみィ」
そういってアクセラレータは体を起こして、銀色の髪をがしがしと手ぐしで整える。
「シャワーでも浴びてきたらいいんじゃないですか。出てくる頃には出来てますよ」
せっかく綺麗な銀髪なんだからちゃんとしないと勿体無いって!とは言う。
彼女が料理している間にここにいても邪魔になる(主に自分の耳に、耳障りという意味で)だろうと判断し、
大人しくに背を向ける。
午前11時10分
「お客さんですか?彼なら今取り込み中なのでお引取り願いたいのですけれど。」
ああ厄介な奴に負けてしまったものだ。それでも約束を守らないというのは自分の信条に背くことになるので、大変避けたい。
もともと敵が多い人間だったのだろうけれど、ここまでだとは思っていなかった。まさか学園都市一強い、という人物がこんな目にあってるとは、本当に思っていなかった。もっと崇拝されて恐れられて、実力主義のこの場所で、行列に並ぼうものなら最優先順位をつけられて誘導されてもおかしくはない。
私も実力主義の場所で育ちはしたけれど、強い奴がこんな陰湿なイジメ紛いのことを、しかも町から受けているとは、思っていなかった。はそう思考する。
ドアが蹴破られたと思えば、そこには案の定「俺強いですよ」というアピールを過剰に貼り付けた、ガラの悪い大人の姿。かける、5。
「あんだあ お嬢ちゃん?俺たち部屋間違えたかア?だとしたら謝るけどついでにオニーサンたちと遊ばないかア?」
「こっち5人いるから結構楽しませてあげられるとおもうぜえいろんな意味で」
「ところでこの辺に銀髪で赤目の目つき悪ィヤツいなかったかなあ?俺たちそいつら探してたんだけど」
「でもまあこの子結構カワイイっすよ。お嬢ちゃんが遊んでくれるならオレらも満足かなー」
「しかもいい匂いするし俺たちにもご馳走してくんねーかなア?」
げひひ、というような笑いが似合うような男たち(×5)の姿に、嫌悪感を通り越して呆れてくる。
火は止めたものの、卵が余熱で焦げてしまわないだろうか。の頭にそんなことが浮かぶ。
「念のため聞き直しますね、何の用でしょうか。」
「んん?オレたちアクセラレータっつー奴探してんだよ。とりあえずおじゃまし」
ひゅん、 と風を切る音がする。鈍い光が、外からの光で反射する。
「ませんよね?」
包丁。
「私今ごはん作ってる最中なんです。用件ならあとで聞きますからとりあえず出てって貰えませんか?」
「んのガキ、調子付いてんじゃねーぞゴラアアァ!」
「じゃあもうちょっと外出ましょうか。ね?ここじゃ周りの皆さんに迷惑がかかりますし。」
「はあぁ?何ザケたこといってんだ?お前に主導権なんてあるわけねーだろがよおぉ!」
凄んだ男が、に掴み掛かる。
はといえば、----ただ冷めた目で、男を見ている。
「はっ包丁が怖いとでも言うと思ったか?オレたちはこれでも能力者でなあ、レベル3なんだよ!お嬢ちゃんが能力者なのかはしらねえが、
これだけの人数相手で勝てるとでも思ってんのか?あぁ?大人しく俺たちを中に入れるんだなあ!」
「黙れ三下」
一瞬、空気が固まった。
いったい誰が、その言葉を言ったのかと。
学園最強の彼ではない。
勿論男たちの誰かが裏切ったわけでもない。
だったら。
「強いっていうのも大変ですよねえ、こんなヤンキーかぶれの人に目つけられて」
はため息をついて言う。
「喧嘩売られて部屋壊されて、プライバシーも何もあったもんじゃないと」
襟首を掴み上げられたままで、
「性格捻くれるのも、もっともだろうけどね」
だらりと下げた包丁を
「あんたたちは知らないだろうけど、いや、知らなくていいや」
握りなおして、
「彼、いい人なんだよねえ。少なくとも私の基準からして-------あんた達の、ひゃくまんばいはいい人」
意思があって、カッコイイし。彼女はそう続けて、笑顔で、包丁を目の前の男の鼻先に突きつける。
「だから、ここは通しません。お引取りください。」
--------------------- 笑顔が、消えた。
逆上した男が、を持ち上げていない方の腕に力を込めて、
「何やってンだよてめエら」
時計の長針が3の字を刺した頃、
「あれ、もうお風呂でたんです」
の目の前に立っていた招かれざる客人たちは、目の前の柵に打ち付けられることとなっていた。
「か、いたい」
結果としても床に叩きつけることとなっていた。
温まったのか、やや顔の赤いアクセラレータがを見下ろす。
「何やってンだお前も」
「アクセラレータさんまだ髪が濡れてますよ風邪引いちゃいますよ」
「風邪なんて引くのはお前みたいなバカだけだ」
「全国の風邪引きに土下座すればいいと思うよ・・・・・ああああ卵!卵冷める!」
そのままドアも閉めずにばたばたとキッチンに駆け寄るをみて、一方通行はため息をつく。
玄関の扉を閉めて、自らも彼女の後を追って歩く。
美味しそうな焦げ目の状態で保たれていた卵を見て、満足そうに笑う彼女をみて、頬が緩みそうになり、背を向ける。
黄色のブランチ
「おい」
「なんでしょうか」
「さっきの声全部聞こえてたぞ」
「!!じゃあ助けてくださいよ!」
「そっちかよ。お前平気そうだったじゃねェか」
「怖かったですよ!泣きそうでした!」
「それどこから本当でどこからが嘘なンだよ」
なんてバイオレンスな新婚だ
最強に惹かれすぎて生きるのが辛い!