銃声が響き渡・・・ってしまった。


これは、音無が来る前の話だ。
ゆりっぺを筆頭としたSSSが本格的な活動ができるようになったころのこと。

まだ一般のNPCを上手く巻き込まずに、自分たちの目的を果たすための方法を模索していたころ、俺たちはある失敗をしてしまった。
天使と対峙するのに精一杯であるがあまり-----NPCが完全に気づきはじめたことに、俺たちが気づけなかったことだ。

俺たちが気づいたとき。
周りにはNPC(もちろん、生徒も先生的なポジションにいる人間も、だ)が集まっているという状況になってしまった。
まずいと思ったときにはもう遅い。


「どうするゆりっぺ!」

後ろに声をかけるが、ゆりっぺは答えない。
これじゃ、公開処刑だ。------なにがどうなるか、わからない


天使はこちらに歩いてくる。

もうだめだ。

俺死んだ。

もう死んでるけど。


そう思ったときに、


目の前に、ひとが、立ちふさがった。


見えたのは、赤いスカート。校則違反。そうじゃない。
天使の武器が、目の前の少女の首元で止まる。



「------これは、演劇の練習だよ。いいね」



彼女は、俺たちにしか聞こえないような声量で、そう言った。
そして彼女は、芝居掛かった動作で、仰々しく、両手を広げて、言い始めた。

「お願い、この人を殺すなら私を殺してからにして!」

天使が一瞬すごく驚いたような顔をする。
しかし周りのNPCたちのことは彼女もわかっていたらしい-----NPCを巻き込まないことを第一とするのは彼女も同じらしく、

「そこをどいて、

武器を離さないままに、そう呟く。
、というのは彼女の名前らしい。

「これ以上邪魔するなら、私も貴女に容赦はしない」
「(まじかよ) だったら私もあなたと戦うしかない」

が言うと、彼女の手に一本の日本刀が現れる。
ギャラリーから「きゃあ」とか「本物か?」とか声が聞こえる。完全に演劇観賞の状態になっている。




そして彼女たちは、本気で、ぶつかり始めた。




ぎんぎんきぃん!と言う音が聞こえて、俺は数歩下がる。
なんなんだ。こいつら。
天使の強さは知っていた。だけど、この子も、強い。

そう思った瞬間に、の刀が飛ばされる。
ひゅんひゅんという音が聞こえて、地面に刀が刺さる。
天使がに一歩一歩近寄る。

が、俺を、ちらりと、見た。


反射的に走って、の盾になるように抱きつく。



「やめろ!俺のためにこれ以上戦うな!」


などというどこかで聞いたような言葉(性別が逆だった気もするが)を吐くと、ギャラリーから歓声のような声が聞こえる。「おおっ」みたいな。「きゃー!」みたいな。

「なにも抱きつかなくても」
「す、すまん・・・」

が呟くのが聞こえたが、そのままで数秒いると、




「はいカットーお疲れ様ー三人とも迫真の演技だったわねー!」

ゆりっぺの助けが入った。
今まで何やってたかと思えば、監督役兼まとめ役とは、彼女らしいというかなんというか。そんなことを思いながら「あ、悪い」とから離れる。

そのは、はーいおつかれえと言いながら俺の肩を叩いて、その後天使の肩を叩く。
なんでそんなに親しげなんだ。そう思いながら天使のほうを見る。


「はいはい、公開練習じゃないんでーこの後は速やかにバラけてくださーい」












NPCが、はけたころ。
俺のすぐ後ろで、ぎいいん!とかいう、金属が激突する音が聞こえた。
後ろを見ると、と天使がまた武器を打ち合っている。

「なな、なにっ・・・?!」

ぎぎぎぎり、という音がして、刀と刀が離れる。

「だーかーらー今日はもう終わりにしなよあたしもお腹すいたし帰りたいし。・・・なに?これ以上やるなら、死ぬまでやるよ?」

低い声でが言うと、天使は大人しく、武器を収めて、こちらに背を向ける。




つぎからは気をつけてね?-----------

そういって、は背を向ける。




01. きっかけ


これが、俺たちが彼女の存在を知った日のことである。

もちろん捏造です